大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)2827号 判決

被告人 小林淳一

〔抄 録〕

所論に徴し、本件訴訟記録および原審において取調べた証拠に現われている事実を精査し、且つ当審における事実調の結果に基いて考察するに、証人中村浩史の当公判廷における供述、検察事務官作成の飲酒検知管示度の確認についてと題する書面ならびに被告人の当公判廷における供述および検察官に対する供述調書に飲酒検知管を綜合すると、被告人は、自動車運転中、原判示日時ころ原判示場所で他車との接触事故をおこし、その旨柏警察署へ報告したが、酒臭がしたため、右現場に来た警察官により右警察署に任意同行され、同署において同夜検知管を使用して飲酒の検査を受けたところ、呼気一リツトルについて〇・五〇ミリグラム以上のアルコールをその身体に保有していることが検知されたことが認められる。

しかしながら、被告人が右分量のアルコールをその身体に保有した影響によって正常な運転ができないおそれがある状態であったことは、証拠上これを認めることができない。もっとも司法巡査作成の被告人に対する酒酔い酒気帯び鑑識カードには被告人は右検査時において歩かせたり、直立させると、その身体がふらつく旨の記載があり、同記載によれば、被告人は、いかにも正常な運転ができないおそれがある状態であったのではないかと考えられないでもない。しかしながら、被告人の当公判廷における供述によると、被告人は、右現場で警察官から任意同行を求められ、これに応じて自ら本件自動車を運転して、右警察署まで出頭し、右飲酒検査を受けた後も程なく右自動車を運転して、同署から帰宅しているが、右いずれの場合においても警察官が右自動車の運転を止めさせるような措置をとったことが認められないことや被告人の供述によれば、飲酒時から原判示時刻まで相当の時間が経過し、被告人は、その間睡眠をとるなどして酔いを醒ましていたことが認められるから、右のような鑑識カードの記載があっても、被告人が正常な運転ができないおそれがある状態であったか極めて疑わしい。

そうだとすると、被告人が前記分量のアルコールをその身体に保有した影響によって正常な運転ができないおそれがある状態であったとする原判決の認定は、事実を誤認したものであるといわなければならない。論旨は、理由がある。

(三井 石崎 四ツ谷)

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